食品ロボットで変わる製造現場|省人化・品質向上を実現する最新技術

2025/06/25

食品製造業界では人手不足が深刻化しており、事業所によっては生産体制の維持が困難な状況が続いています。

このような背景から、自動化・省人化が急務となる中、「食品ロボット」が注目を集めています。

食品ロボットは、従来人手に依存していた製造工程を自動化し、安定した生産体制の構築を可能にする革新的な技術です。

人件費削減や品質向上といった直接的な効果に加え、労働環境の改善や安全性向上といった様々なメリットをもたらします。

そこで本記事では、食品機械を提供している株式会社コバードが、プロの目線から食品ロボットの概要、導入メリットを詳しく解説します。

食品業界でロボットが注目されている3つの理由

食品業界において、ロボット導入への関心が高まっている背景には、業界特有の課題があります。

その理由は以下の3つの通りです。

  • 少子高齢化による人口減少で食品の需要が低下している
  • 食品の品質水準が高まっている
  • 原材料や人件費、物流費等のコストが上昇している

これらの課題を解決する手段として、食品ロボットが注目を集めています。

少子高齢化による人口減少で食品の需要が低下している

日本の少子高齢化は食品業界に大きな影響を与えています。

生産年齢人口の減少により、食品製造の現場に限らず深刻な人手不足が発生しており、「人の手で作る」に依存した生産体制の維持が困難になっています。

また、人口減少に伴って国内の食品需要も変化しており、効率的な生産体制の構築が求められています。

このような状況下で、食品ロボットは安定した生産力を確保する重要な解決策として位置づけられています。

労働力確保の困難さから、24時間稼働可能なロボットシステムの導入により、生産性向上と人手不足の解消を同時に実現できることが、多くの食品メーカーに評価されています。

食品の品質水準が高まっている

消費者の食品安全・品質に対する意識の高まりにより、食品メーカーには従来以上に厳格な品質管理が求められています。

人の手による作業では、どうしても個人差による品質のばらつきが発生してしまいます。

食品ロボットを導入することで、一定の品質基準を保った製品を継続的に生産することが可能になります。

特に、計量・混合・成形といった工程では、ロボットの精密な制御により、人手作業では達成困難な品質の均一化を実現できます。

また、HACCP(ハサップ)やISO22000などの国際的な食品安全管理システムの導入が進む中、トレーサビリティ(生産から消費までの履歴を追跡できる仕組み)の確保や作業記録の自動化も重要な要素となっており、食品ロボットはこれらの要求にも対応できる優れた特徴を持っています。

原材料や人件費、物流費等のコストが上昇している

近年、食品業界では原材料価格の高騰、人件費の上昇、物流費の増加など、様々なコスト要因が経営を圧迫しています。

これらのコスト上昇に対応するため、食品製造の現場では生産効率の向上と無駄の削減が重要視されているのです。

食品ロボットを導入すれば、長期的な人件費削減効果が期待できるほか、原材料の無駄を最小限に抑える精密な加工が可能になります。

また、24時間稼働により設備稼働率を向上させることで、単位あたりの製造コストを削減可能です。

初期投資は必要ですが、中長期的な視点で見ると、食品ロボット導入による総合的なコスト削減効果は非常に大きく、投資回収期間も短縮される傾向にあります。

食品ロボットとは?その種類と特徴

食品ロボットは、食品の製造・加工・包装・搬送などの工程を自動化するロボットの総称です。

food-robot-factory食品業界特有の衛生基準や安全性要求に対応した設計が特徴で、用途に応じて様々な種類が開発されています。

食品ロボットには以下のような機能・性能を持ったタイプの違う製品があります。

項目 内容
食品搬送ロボット 原材料・半製品・完成品の運搬を自動化。AGV(無人搬送車)タイプやアーム型ロボットを用途に応じて選択。ステンレス素材採用、防水・防塵性能で衛生基準をクリア。重量物の搬送や高温・低温環境での作業に対応。
ピッキング・パレタイジングロボット 製品の選別・積込み作業を自動化。画像認識技術により形状・色の異なる食品を正確に識別。重量・形状が不規則な食品にも対応可能。冷凍・冷蔵環境での長時間作業に対応し、作業者の負担軽減を実現。
加熱・調理を担うロボット(例:揚げ物、炒め) 揚げ物・炒め物などの加熱調理工程を自動化。温度管理・調理時間の精密制御により一定品質を実現。センサーによる温度監視と自動制御で最適な調理条件を維持。食材投入から取り出しまでの一連動作を自動化し、安全性向上に貢献。

これらのロボットは一例であり、近年では料理工程を完全自動化できるロボットも登場しています。

このような技術革新により、食品製造業界の生産性をさらに向上させる環境が整いつつあります。

食品ロボット導入のメリット

food-robot-benefits

では実際に、食品ロボットを導入することで得られるメリットについて紹介します。

人件費削減と省人化

食品ロボット導入の最も直接的なメリットは、人件費削減と省人化です。

特に夜勤や重労働が多い食品製造現場では、ロボットによる24時間稼働体制の構築により、大幅な人件費削減が可能になります。

一度導入されたロボットは、メンテナンス期間を除いて継続的に稼働するため、人員の確保が困難な時間帯や繁忙期でも安定した生産体制を維持できます。

また、少数精鋭の体制により、熟練作業者をより付加価値の高い業務に配置することも可能になります。

省人化により、労務管理の負担軽減や労働災害リスクの削減といった副次的な効果も期待できます。

製品品質の均一化・歩留まり改善

食品ロボットは、プログラムされた動作を正確に繰り返すため、製品品質の均一化に大きく貢献します。

人手作業で発生しがちな個人差や疲労による品質のばらつきを排除し、常に一定レベルの品質を維持できます。

また、精密な制御により原材料の無駄を最小限に抑え、歩留まりの向上を実現します。特に高価な原材料を使用する製品では、歩留まり改善による経済効果は非常に大きくなります。

品質データの自動記録機能により、トレーサビリティの確保や品質改善のためのデータ分析も効率的に行えるようになります。

作業環境の安全性・衛生向上

食品製造現場には、高温・低温環境、化学物質の使用、重量物の取り扱いなど、作業者にとって危険な要素が多数存在します。

食品ロボットの導入により、これらの危険作業から作業者を解放し、労働災害のリスクを大幅に削減できます。

また、食品ロボットは衛生基準に配慮した設計となっており、人の手が直接食品に触れる機会を減らすことで、細菌汚染のリスクを低減します。

自動洗浄機能を備えた機種では、作業終了後の清掃作業も自動化され、衛生管理の向上と作業負担の軽減を同時に実現できます。

食品ロボット導入の注意点

食品ロボットの導入には多くのメリットがある一方で、成功のためには慎重な検討が必要な注意点も存在します。

これらの点を事前に把握し、適切な対策を講じることが重要です。

初期投資コストとROI

食品ロボットの導入には相当な初期投資が必要です。ロボット本体だけでなく、周辺設備の整備、既存ラインの改修、安全設備の設置なども含めると、総投資額は高額になる場合があります。

投資対効果(ROI)を正確に算出するためには、人件費削減効果、生産性向上効果、品質改善による売上増加効果などを総合的に評価する必要があります。

また、ロボットの耐用年数や保守費用も考慮した長期的な収支計画を立てることが重要です。

補助金や税制優遇措置の活用も検討し、実質的な投資負担を軽減する方法も併せて検討することをお勧めします。

自社ラインへの適合性(既存設備との連携)

食品ロボットを既存の生産ラインに導入する際は、既存設備との連携性を十分に検討する必要があります。ロボットの設置スペース、電源容量、制御システムの互換性など、技術的な適合性を事前に確認することが重要です。

また、製品仕様や生産量の変更に柔軟に対応できるよう、可変性のあるシステム設計を心がけることも大切です。将来的な設備拡張や製品ライン変更にも対応できる拡張性を確保しておくことで、長期的なメリットを享受できます。

導入前には詳細な現地調査と設計検討を行い、最適なシステム構成を決定することが成功の鍵となります。

導入後の運用・メンテナンス体制

食品ロボットの安定稼働には、適切な運用・メンテナンス体制の構築が不可欠です。

日常的な点検・清掃作業から、定期的な部品交換、故障時の対応まで、体系的な保守計画を策定する必要があります。

社内での技術者育成も重要な課題です。

基本的な操作方法からトラブルシューティング、簡単な調整作業まで対応できる人材を育成することで、運用コストの削減と稼働率の向上を図れます。

また、メーカーとの保守契約やサポート体制についても十分に検討し、迅速な技術支援を受ける体制を確保することが大切です。

衛生管理・清掃性への配慮

食品ロボットは食品に直接接触するため、厳格な衛生管理が求められます。

材質の選定から構造設計まで、清掃しやすく細菌の繁殖を防ぐ設計となっているかを確認する必要があります。

特に、分解清掃が必要な部分については、作業性と清掃効果を両立する設計になっているかを検証することが重要です。

また、洗剤や殺菌剤に対する耐性も確認し、日常的な衛生管理作業に支障をきたさないことを確認する必要があります。

HACCP対応や各種認証取得状況についても事前に確認し、自社の品質管理基準に適合することを確認してから導入を進めましょう。

株式会社コバードの食品機械と自動化支援

食品ロボットの導入を検討する際、重要なのは信頼できるパートナー選びです。

株式会社コバードは、食品業界向けの自動化機械を専門とするメーカーとして、長年の経験と技術力により、食品メーカーの生産性向上と品質改善を支援してまいりました。

これまでの豊富な導入実績と技術ノウハウを活かし、お客様の課題に最適なソリューションを提案しています。

ここからは、実際に多くのお客様から選ばれ、現場で活躍している代表的な機械をご紹介します。

マジックハンドシリーズ

MH-S

項目 内容
特徴 手包み以上の品質を実現する包あん成形機
生産能力 毎時800〜12,000個
対応食品 あんぱん、デニッシュあんぱん、カレーパン、メロンパン

マジックハンドシリーズは、発酵生地の特性を活かした独自の包あん技術を搭載した成形機です。

丸いシート状にした生地の中央へフィリングを充填し、人の手で包むようにやさしく包あんする構造を採用。

生地にストレスをかけず、柔らかく繊細な発酵生地(菓子パン・ドーナツ・中華饅頭など)も手作業以上に美しく包み込むことができます。

クリームや餡はもちろん、栗・卵・ソーセージなどの固形具材もそのまま包あん可能です。

外皮生地と内具材の比率は「1:1.3」以上にも対応し、具材がぎっしり詰まった高級感のある製品づくりが可能です。

手包み品質を量産で実現しながら、扱いにくい素材にも柔軟に対応。高付加価値な商品づくりに最適なモデルです。

ロボセブンシリーズ

ar-330

項目 内容
特徴 和菓子・洋菓子・惣菜・パンといった様々な食品の包あんが可能
生産能力 毎時1,200〜14,400個
対応食品 大福、栗饅頭、アイスボックスクッキー、チュロス、中華饅頭、小籠包、ハンバーグ、メンチカツ、コロッケ

コバードの「ロボセブンシリーズ」は、包あん成形機のスタンダードとして多くの現場で採用されている実績豊富なモデルです。

対応食品は幅広く、大福やアイスボックスクッキー、中華饅頭や小籠包、鼻バーグといった、和・洋・中の多彩な素材に対応できる高機能かつ多用途型の成形機になります。

世界初のシンプルな構造を持つ成形フィラーをはじめ、柔らかい生地でも均一で美しい包あんを実現する技術を多数搭載。

素材を傷めず、高品質な商品づくりが安定して行えます。

そのほかにも、操作性や洗浄性、省スペース性にも優れているだけでなく、現代の多品種・小ロット生産やIoT化にも対応可能です。

シート成形機

シート成形機KZPM

コバードのシート成形機は、加圧・練り・せん断を加えない「ひっぱり成形方式」によって、食品素材を傷めずに連続的にシート状・角棒状に成形できる革新的な装置です。

これまで自動化が難しかった、柔らかく粘性のあるクリーム状素材や、付着性の高い扱いにくい素材にも対応。

従来の成形機では破損や変形の恐れがあった素材でも、品質を維持したまま安定して自動成形できます。

シンプルな構造で操作性・清掃性にも優れ、小ロットから大量生産まで柔軟に対応可能です。

成形対象や生産能力などのご要望に応じて、最適なモデルをご提案いたします。

超音波カッター

超音波カッター

項目 内容
特徴 食品素材に加圧・練り・せん断作用等を加えない「ひっぱり成形」を採用した、画期的なシート成形機
機能 シート成形寸法目安 幅50~800㎜、厚み2~30㎜
角棒成形寸法目安 幅5㎜~(1本当たり)、厚み2~30㎜
対応食品 サブレ、チョコチップスコーン、クリームサンドクッキー

コバードの超音波カッターは、超音波振動による切断技術を応用した食品専用のカッター装置です。

1秒間に2万回以上という高周波振動(最大振幅70μm)を刃先に与えることで、これまでにないシャープで美しい切れ味が可能です。

クリームやムース、タルト生地など粘着性のある素材にも対応し、カット面が乱れにくく、商品価値を損なわない仕上がりを実現できます。

ターンテーブルとの組み合わせにより、回転体への自動カットも可能。ケーキや焼菓子など多様な食品のカット作業に最適です。

まとめ

食品業界におけるロボット導入は、人手不足や品質向上要求、コスト削減圧力といった業界課題に対する有効な解決策として注目されています

搬送・ピッキング・調理の各工程で活用される食品ロボットは、人件費削減、品質均一化、安全性向上といった様々なメリットをもたらしてくれます。

一方で、初期投資コストや既存設備との適合性、運用・メンテナンス体制の構築、衛生管理への配慮など、導入時に検討すべき注意点も存在します。

これらの課題を適切に解決するためには、専門的な知識と経験を持つパートナーとの連携が重要になります。

株式会社コバードでは、マジックハンドシリーズやロボセブンシリーズなど、食品業界に特化した自動化機械を提供し、お客様の生産性向上と品質改善を支援しています

食品ロボットの導入を検討されている企業様は、ぜひ専門メーカーとしての知見を活用し、最適なソリューションの実現を目指していただければと思います。