セントラル工場とは?注目されている理由やメリット・デメリットを紹介!

2026/07/31

多店舗展開や食品製造の拡大を進めるなかで、「セントラル工場」や「セントラルキッチン」の導入を検討する企業が増えています

セントラル工場とは、各店舗や各拠点で行っていた製造・仕込み・加工を一つの工場に集約し、品質の安定化や生産効率の向上を目指す仕組みです。

一方で、工場を作るだけでは生産性は上がりません。

製造量・商品特性・衛生管理・設備選定・ライン設計まで含めて考えることが重要です。

本記事では、セントラル工場の基本からメリット・デメリット、必要な設備、導入時の注意点まで解説します。

セントラル工場の仕組み

セントラルキッチンで使用される食品製造設備

セントラル工場では、各店舗の厨房で個別に行っていた作業をまとめて一元化することで、品質の均一化・コスト削減・衛生管理の強化を同時に実現できます

似た言葉として「セントラルキッチン」と「プロセスセンター」があります。

セントラルキッチンは主に飲食チェーンが店舗供給を目的として使う呼称で、惣菜や半調理品を大量に仕込む厨房設備を指すことが多いです。

プロセスセンターは食肉・水産物などの一次加工に特化した施設を指す場合に使われます。

呼称は業界や企業によって異なりますが、「製造を集約して効率化する」という本質的な目的は共通しています。

本記事ではこれらをまとめて「セントラル工場」として解説します。

セントラル工場が注目されている理由

セントラルキッチンにおける食品製造工程

セントラル工場への関心が高まっている背景には、食品・飲食業界が直面する複数の構造的な課題があります。

単なるコスト削減策としてではなく、事業の継続性と成長を支える経営インフラとして位置づけられるようになっています。

人手不足の深刻化と、属人化(熟練者への依存)からの脱却

食品・飲食業界における最も深刻な課題の一つが、慢性的な人手不足です。

特に「この人でないと作れない」「長年の経験と勘が必要」という属人化した製造工程は、熟練スタッフの退職や体調不良が即座に生産ラインの停止や品質低下につながるリスクをはらんでいます。

セントラル工場では、製造工程を標準化・機械化することで、特定の個人の技術や経験に依存しない生産体制を構築できます。

また、各店舗での仕込み作業をまとめて工場に集約することで、店舗スタッフは接客・販売に専念でき、現場の人件費と負担を同時に削減可能です。

この仕組みは以下のような業態で広く活用されています。

  • 惣菜製造
  • 和菓子や洋菓子の製造
  • 冷凍食品メーカー
  • 給食や病院食の供給事業
  • 外食チェーン

このように、大量かつ安定した製造が求められる現場で、セントラル工場は人手不足対策と生産性向上の両立を実現する手段として注目されています

多店舗展開における、品質・味のばらつきとロスの削減

多店舗展開が進むほど深刻になるのが、店舗間での品質・味のばらつきです

各店舗の担当者が個別に仕込みを行う体制では、材料の計量・加熱時間・仕上げの判断が人によって異なり、同じメニューでも味や見た目が変わってしまうことがあります。

セントラル工場で一括製造・管理することで、すべての店舗に均一な品質の製品を供給できます

さらに、材料を一箇所でまとめて仕込むことで食材ロスが減り、使い切れなかった食材の廃棄コストを抑えることも可能です。

原材料価格の高騰が続く現在、歩留まりの改善と仕入れの一元化による原価削減は、経営に直結する重要な意味を持ちます。

品質の安定と原価対策を同時に実現できる点が、セントラル工場が経営判断として選ばれる大きな理由の一つです。

HACCP対応をはじめとする、厳格な衛生管理への要求

2021年6月にHACCP(ハサップ)に沿った衛生管理が日本の食品事業者に完全義務化されたことで、食品製造・飲食業界全体の衛生管理水準に対する要求が高まっています

しかし、各店舗の狭い厨房で温度管理・異物混入防止・記録の保持といったHACCP対応を徹底するには、スペースと人員の両面で限界があるのです。

セントラル工場では、衛生管理を一拠点に集中させることで、設備・動線・記録管理を統一的にコントロールできます。

専用の洗浄設備・温度管理システム・ゾーニング設計を整えた工場環境で製造を行うことは、食品事故リスクの低減と法令対応の両立につながります。

衛生管理の一元化は、消費者の信頼を守るうえでも現代の食品事業者に欠かせない経営課題です。

セントラル工場を導入するメリット

セントラルキッチンを導入するメリット

セントラル工場を導入することで、店舗運営・人員配置・スペース活用など複数の面で効果が期待できます。

具体的に4つの観点から見ていきましょう。

現場の労働環境が改善し、店舗スタッフの定着率が上がる

仕込み作業が多い店舗では、開店前の早朝から仕込みが始まり、閉店後の片付けまで含めると拘束時間が非常に長くなります。

こうした過重な労働環境が、スタッフの疲弊と離職率の上昇につながるのです。

セントラル工場に仕込み・製造を集約することで、店舗スタッフの業務は接客・提供・販売に絞り込まれます

従業員の作業量が減り、勤務時間が安定することで、スタッフの定着率が改善するというケースは多くの導入企業で報告されています。

採用コストと教育コストの削減にも間接的につながる重要なメリットです。

熟練の職人がいなくてもスピーディーな多店舗展開が可能になる

新規店舗を出店するたびに「製造を担える熟練スタッフ」を確保しなければならない体制では、出店スピードが人材不足によって制約されてしまいます。

しかし、セントラル工場で製品を一元製造する体制が整えば、新しい店舗には完成品または半加工品を供給するだけで済みます

店舗ごとに高いスキルを持つ調理スタッフを配置する必要がなくなり、比較的短期間で新店を立ち上げられるようになるのです。

事業拡大のスピードを人材面のボトルネックから解放できる点は、成長フェーズにある企業にとって特に大きなメリットです。

製造工程の集約により全社的な人員配置・シフト管理が効率化する

各店舗がそれぞれ独立して製造を行う体制では、繁忙期と閑散期の波が店舗ごとにバラバラになり、シフト管理や応援体制の構築が難しくなります。

セントラル工場に製造を集約すれば、工場側の稼働スケジュールを計画的にコントロールできるようになり、全社的な人員配置の最適化が進みます。

工場スタッフのシフトを安定させつつ店舗スタッフのシフト調整も簡素化できるため、管理部門の負担を大幅に軽減可能です。

仕込みスペースが不要になり、店舗の客席数を最大化できる

飲食店や小売店の店舗面積は限られており、その中で厨房・仕込みスペース・客席・売り場をすべて確保しようとすると、どこかが犠牲になってしまいます

特に都市部では、家賃単価の高い床面積をバックヤードや仕込みに使うことが収益効率の観点から大きな課題です。

セントラル工場に仕込みを集約することで、店舗側は仕込みスペースを削減または撤廃でき、その分を客席数の拡大や売り場面積の増加に充てられます

同じ店舗面積でより多くの売上を生める構造に転換できる点は、特に坪効率が重視される業態で大きな競争優位になるはずです。

セントラル工場のデメリット・注意点

セントラルキッチンの仕組みと特徴

一方で、製造を一拠点に集約することにはリスクや注意すべき点も存在します。導入を検討する前に、代表的な注意点を押さえておきましょう。

初期投資が大きい

セントラル工場の構築には、土地・建物・設備・インフラ整備など多岐にわたる初期投資が必要です。

製造規模や自動化の程度によって金額は大きく異なりますが、数千万円から数億円規模の投資になるケースも珍しくありません。

投資回収には一定の時間がかかるため、現在の生産量・将来の拡張計画・資金調達の手段を慎重に試算したうえで導入判断を行う必要があります。

補助金や設備リースの活用も含めて、財務計画を綿密に立てることが重要です。

配送コストが発生する

各店舗で個別に仕込んでいた体制から工場集約に切り替えると、製品を工場から各店舗へ配送するコストが新たに発生します

冷蔵・冷凍品の場合はさらに温度管理コストも加わります。

配送ルートの最適化・配送頻度の設計・物流業者の選定など、配送コストを抑えるための設計が必要です。

店舗数が少ない段階や、工場から店舗までの距離が遠い場合は、配送コストが収益を圧迫するリスクがあるため、導入前のシミュレーションが欠かせません。

工場停止時のリスクが大きい

製造を一拠点に集中させることで効率は上がりますが、その拠点が停止した場合の影響は全店舗に及びます

設備の故障・停電・自然災害・食品事故などのトラブルが発生すると、すべての店舗への供給が止まるというリスクがあります。

このリスクに対応するためには、設備の定期メンテナンス・予備設備の確保・緊急時の代替調達先の整備・BCPの策定など、リスク管理体制を事前に整えておくことが不可欠です。

商品によっては品質維持が難しい

セントラル工場で製造した製品は、配送・保管・店舗での仕上げという工程を経て提供されます。

揚げたて・焼きたてなど「できたての状態」が価値の中心にある商品は、工場集約型の供給体制と相性が悪く、品質の維持が難しくなるケースがあります

すべての商品をセントラル工場化するのではなく、工場製造に向く商品と店舗での仕上げが必要な商品を見極め、それぞれに最適な製造体制を組み合わせることが現実的な判断です。

セントラル工場の導入事例

セントラルキッチン導入事例

実際の企業がどのようにセントラル工場を活用しているか、代表的な事例を紹介します。

セブン&アイ・グループ

セブン&アイ・グループでは、グループ食品戦略の一環として「Peace Deli(ピースデリ)」を通じた集中製造・加工体制を構築しています。

2024年に稼働したグループ初の共通工場「Peace Deli千葉キッチン」では、惣菜を製造するセントラルキッチンと精肉加工を行うプロセスセンターを同施設内に併設しました。

これにより、1階で手掛けた自家製出汁を2階の精肉加工に活用するなど原材料の相互供給を可能にし、品質向上とコスト削減を両立させています

店舗側の加工・調理オペレーションを一部削減しつつ、セブンプレミアムのノウハウを活かしたこだわりのオリジナル商品をイトーヨーカドーなど約200店舗へ効率よく安定供給している代表例です。

参考:セブン&アイグループの力を結集したグループ”初”の共通セントラルキッチン「Peace Deli千葉キッチン」稼働開始

成城石井

成城石井では、経験豊富な料理人が中心となり、素材や手作業にこだわった本格的な自家製惣菜・パン・スイーツをセントラルキッチンで一貫して企画・開発・製造しています。これらの自家製商品は全体の売上の約20%を占める主力成長エンジンです。

2022年には製造拠点を発展的集約した「大和第3セントラルキッチン」を稼働させ、既存の約200店舗から約400店舗分へと供給能力を飛躍的に拡大させました

あえて手作業の工程を残しつつ最新設備を融合させることで、味の品質と試作から販売までのスピード感を両立し、自社製造比率の向上とコスト削減を推進している好例と言えます。

参考:成城石井、新たなセントラルキッチンを神奈川県大和市に操業開始。デザート品目は2倍・惣菜品目2割増しへ!環境配慮への取組みも強化

秋田キャッスルホテル

秋田キャッスルホテルでは、ホテル事業で培った調理技術を生かし、病院・福祉施設向けの「メディカル給食事業」を展開しています。

2026年には、クックチル方式(一括調理後に急速冷却して配送し、現地で再加熱する手法)を採用した集中調理施設(セントラルキッチン)を本格稼働させました。

各施設での個別調理から一括製造へ移行することで、調理工程と管理体制を一元化し、1日最大10,000食の安定製造を実現しています

ホテル品質を保ちながら治療食や介護食の味・見た目のばらつきを抑え、人手不足に対応しつつ安全性と製造効率を大幅に高めた実例です。

参考:医療・福祉向けメディカル給食の安定供給を実現するセントラルキッチンが4月本格稼働【秋田キャッスルホテル】

セントラル工場の導入ステップ

セントラル工場の導入を成功させるためには、段階的な計画と検証が不可欠です。

ここでは、実際にどのような順序で進めればよいかを解説します。

現状の課題を洗い出して製造する商品と目標生産量を決める

まずは「なぜセントラル工場が必要なのか」を明確にすることから始めましょう

人手不足の解消なのか、品質の安定化なのか、コスト削減なのか、課題の優先順位によって必要な設備規模・自動化の範囲・工場のレイアウト方針が変わってきます。

あわせて「どの商品を工場で製造するか」「1日・1ヶ月あたりの目標生産量はいくらか」を具体的な数字で設定しましょう。

この数字が曖昧なままでは、設備の選定も投資計画も精度が上がりません。

現在の各店舗の仕込み量・廃棄率・人時数を集計し、集約後の目標値と比較することで、必要な生産能力の基準が見えてくるはずです。

必要な設備を選定する

製造する商品と目標生産量が決まったら、それを実現するための設備を選定していきます。

セントラル工場に導入される主な設備カテゴリとしては、成形・包あん機(饅頭・大福・ハンバーグ・コロッケなど)、スライサー・カッター(惣菜・パン・ケーキなど)、搬送コンベア、冷却・急速冷凍設備、包装機、洗浄・殺菌設備などが挙げられます。

ここで重要なのは、「単体の設備性能」だけで選ばない点です。

上流から下流までの工程がスムーズにつながるラインとして設計されているかどうかが、実際の生産効率を左右します。

特に手作業が多く残る成形・包あん工程は省人化効果が大きいため、優先的に検討する価値があるでしょう。

機械化する工程の優先順位を決めて試作・テストで品質を確認する

すべての工程を一度に機械化しようとすると、初期投資が膨らむうえに立ち上げ時のリスクも高まってしまいます。

まず「最も人手がかかっている工程」「品質ばらつきが最も大きい工程」「機械化の費用対効果が高い工程」を優先的に自動化対象として特定することから始めましょう

設備を選定・発注する前には、実際の食材・配合・工程を使った試作テストを必ず実施してください。

カタログスペック上では対応可能に見えても、実際の材料との相性・形状の再現性・スピードと品質のバランスは試作を通じてしか確認できません。

「導入してから想定と違った」という失敗を防ぐためにも、試作テストは省略できない重要なステップです。

ライン全体のレイアウト設計を行う

設備が決まったら、工場内のレイアウト設計へと進みます。単に設備を置くスペースを確保するだけでなく、「原材料の受け入れ→保管→仕込み→成形・加工→冷却→包装→出荷」という一連の流れが、最短動線で無駄なく進むよう設計することが肝心です。

また、衛生ゾーニング(汚染区域と清潔区域の分離)の観点から動線を設計することや、人と食材・製品の流れが交差しないようにしましょう。

今後の生産量拡大に対応できるスペースの余裕を持たせる点も含め、初期設計段階からしっかり組み込んでおくことをおすすめします。

補助金・設備投資計画を検討する

セントラル工場の設備投資においては、活用できる補助金や助成金が複数存在します

例えば、「ものづくり補助金」「省エネルギー投資促進支援事業費補助金」「食品産業の輸出向けHACCP等対応施設整備事業」など、事業の目的や規模に応じた制度を活用可能です。

ただし、補助金の申請には事前準備と締め切りがあり、制度の内容も年度ごとに変わるため、最新情報の確認と早めの準備をおすすめします。

具体的な補助金の詳細については、こちらの記事も参考にしてみてください。

セントラル工場の設備導入なら株式会社コバードへ

セントラル工場の成否は、設備の性能だけでなく「ライン全体が最適に設計されているか」で決まります。

単体の機械を購入するのではなく、製造ラインをトータルで設計・提案できるパートナーを選ぶことが重要です。

株式会社コバードは、包あん機・超音波カッターをはじめとする食品製造機械の専門メーカーとして、多様な食品カテゴリに対応したライン設計の実績を持ちます

  • 和菓子:饅頭・大福・どら焼き・羊羹など
  • 洋菓子:クッキー・サブレ・ロールケーキ・タルトなど
  • パン:あんパン・クリームパン・惣菜パン・食パンなど
  • 中華菓子・点心:肉まん・小籠包・月餅など
  • 惣菜等:ハンバーグ・コロッケ・メンチカツ・冷凍惣菜など

これらの食品に対して、成形・包あん・カットまでの製造工程を一貫してラインとして設計・提案できることがコバードの強みです。

また、導入前には実際の食材・配合を使った試作テストに対応しており、設備導入後の立ち上げ支援・操作トレーニング・アフターメンテナンスまで伴走サポートを提供しています。

コバードは「工場を作ること」だけでなく「その工場で安定した生産が続けられること」を目標に、お客様のセントラル工場化を支援します

セントラル工場に関するよくある質問

小規模でもセントラル工場は導入できますか?

セントラル工場は大企業の専用設備というイメージがありますが、店舗数が2〜3店舗の段階から製造を集約して効率化を図る事例も多くあります。

重要なのは規模の大きさではなく、現在の課題に対して集約によって解決できることが明確にあるかどうかです。

セントラル工場の導入費用はどれくらいですか?

導入費用は、製造する商品・生産量・自動化の範囲・建物の新設または既存活用によって大きく異なります。

設備のみであれば数百万円から対応可能なケースもありますが、建物・設備・インフラをゼロから整備する場合は数千万円〜数億円規模になることもあります。

まずは現在の生産量と将来の拡張計画を整理したうえで、必要な設備の概算見積もりを取ることをおすすめします。

補助金の活用によって自己負担額を抑えられるケースもあります。

セントラル工場ではどの工程から機械化すべきですか?

「最も人手がかかっている工程」から優先的に機械化することが基本的な考え方です。

多くの食品製造現場では、成形・包あん工程が手作業への依存度が高く、品質ばらつきも発生しやすいため、機械化による省人化・品質安定化の効果が大きい工程として優先度が高くなります。

ただし、最適な優先順位は製造する商品・現場の課題・投資予算によって異なりますので、まずは専門家への相談から始めることをおすすめします。

まとめ

セントラル工場は、製造・仕込み・加工を一拠点に集約し、品質の安定化や生産性向上を目指す仕組みです。

人手不足・属人化・品質ばらつき・衛生管理への対応という、現代の食品・飲食業界が直面する複合的な課題を解決する手段として、導入する企業が増えています。

ただし、工場を作るだけでは十分な効果は得られません。

手作業が多い工程を見直し、ライン全体を最適化することが重要です。

セントラル工場化を検討している場合は、設備単体ではなく、製品特性や将来の生産計画に合わせてライン全体を提案できるメーカーへの相談が大切です。

株式会社コバードでは、試作テストから設備導入・運用サポートまで一貫して対応しています。まずはお気軽にご相談ください。